2026/07/06 20:47

こんにちは。Y. & SONS 表参道スタッフの藁谷です。


7月に入りましたが、東京はまだまだ曇りが続く日々です。
最近、休みの日に実山椒の佃煮を仕込みました。
曇り空のジメジメとした湿気と暑さも吹き飛ばせる、我が家の初夏の定番です。
自分の手で仕込みをして、日々の食卓を少し豊かにする。そういう素朴で実用的なものの中にこそ、本当の心地よさがあるような気がしています。

まさにそうした「人が生きるために生まれ、日々の暮らしで使われることで磨かれてきた」究極の実用品こそ、今回ご紹介する『クバ民具』です。
与那国島の豊かな自然から生まれた、その無駄のない美しい佇まいについても少しですがご紹介いたします。

まずは何より「クバ」について。
クバは、ヤシ科の常緑高木です。和名を「ビロウ(檳榔)」といいます。
クバ民具でも使われている葉は、直径1~2mで掌状に広がって深く裂け、先が垂れ下がるのが特徴です。
油分を多く含み、水は湿気に強いことから、古来から日用品や屋根として人々の暮らしを支えてきた植物です。
日本の歴史においてビロウは神木であり、「アヂマサ」という名前で古事記にも登場します。また、大誉祭における百子帳の屋根材として使われるなど、古代から現代に至るまで、神聖な植物としての側面もあります。

「クバ」とはビロウの沖縄での呼び名です。
日本同じく神聖視されており、「神の訪れる神聖な木」として拝所に植えられる木でもあります。
また、「蒲葵ぬ葉世(クバヌフアユー)=世の始まり」という言葉があるなど、根源的な存在ともされています。


クバの葉(与那覇桂子さんインスタグラムより引用)

Y. & SONSで取り扱うクバ民具は全て、「よなは民具」さんに製作いただいております。
よなは民具さんは与那国島の祖納(そない)集落に工房を構え、与那覇有羽・桂子さん夫妻が営んでいらっしゃいます。
先祖から受け継がれてきたクバ民具の文化を未来へ繋ぐことに強い情熱を持ちながらも、現代の様式や使い手の用途に合わせながら、実際使える道具として提案することを大切にされている職人さんです。
島内外で民具販売やワークショップなどを行うなど、クバ民具という民藝文化を絶やさずにつなげる活動もされています。
また、材料のクバを育てている畑は有羽さんのお祖父様がクバを植え始めた場所だそうです。




Y. & SONSにて、2021年よりお取り扱いしているよなは民具さんのクバ民具ですが、私たちにとってはなくてはならない存在となりました。Y. & SONSでは籠バッグや扇子、ノートに至るまで、和装以外にも日常的に使える様々なものをお取り扱いしています。

その中でもクバ民具は、クバの葉本来の特性を活かした最小限の加工で製作されています。バッグとして使えるものや扇子など、500年以上もの間、人が生きるために必要だからこそ生まれ、磨かれ、残ってきた、普遍的な「用の美」を体現しています。
最小限の加工で作られるからこそ、最初は色が緑がかっており、時を経るごとに薄い茶色へと美しく経年変化していくなど、人間の手仕事とクバという植物のつながりを日常の中で実感していただけるのが、私が考える魅力です。また、少し抹茶のような、クバの葉の青々とした良い香りがするのも、注目していただきたいポイントです。




現在Y. & SONSでお取り扱いしているクバ民具をご紹介いたします。




ウブル:沖縄の方言で「水汲み」を意味するウブルは、その名の通り井戸や川の水汲みに使用されてきたほか、沖縄の伝統行事「爬竜(ハーリー)」では、船が転覆しないよう中から水をかき出す時などにも使われます。現代においても島の年中行事や日常生活でも用いられており、50代以上の島民はみなサッと作ることができるくらい身近なものであるそうです。花を飾ったり、小物入れとして使うなど、インテリアにもお勧めです。




カブチ:ドーナツ状に編んだ、頭に荷物を載せて運ぶときにクッションとして用いられていた道具です。現代では鍋敷きやタオル掛け、リースのような飾りとして使用されることが多く、その頂点には渦のような細かな細工が施されています。これは与那国島の特に柔らかいクバだからこそ可能な細工です。




クバオージ:クバの葉を平らになるように数日間かけて乾燥したのち、半分に割いて作られる、自然で美しい半月型のフォルムと軽さが特徴的な扇です。風を送るための日常的な用途だけでなく、地域の豊年祭などでは祭祀を司る女性が持って踊る際にも使われます。




クバ団扇:クバの葉と竹と糸のみを用いて作られる団扇です。葉脈や節などクバの形が美しくそのまま残された見た目が特徴的です。古来では、士族や巫女に使われ、現代でも琉球舞踊などに用いられます。




クバほうき:クバの掌状に広がる葉先がそのまま活かされたほうきです。手のひらサイズのため、お庭やお外の細かい部分の掃除に役立ちます。

先人たちの知恵と、与那国島の風土がそのままの形になったようなクバ民具。
無駄を削ぎ落としたその造形は、和装の装いにはもちろんのこと、日常のシンプルな空間においても、不思議とすんなり馴染んでくれます。

青々とした葉が、ともに時間を重ねることで少しずつ飴色へと経年変化していく。
手入れをしながら長く愛用していくそのゆったりとした時の流れは、まさに南国を感じずにはいられません。
現代の私たちの暮らしを根底から豊かにしてくれる道具として、ぜひ日々の生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

最後に、皆様へ特別なイベントのご案内です。



この度、Y. & SONS各店舗にて、美しい南国の手仕事をご覧いただける特別な機会をご用意いたしました。

世界三大織物のひとつであり、主に奄美大島で作られる「大島紬」を、約30反ご用意いたしました。
今回ご紹介した与那国島の「クバ民具」とともに、「暮らしとともに時代を超えたものづくり」が一同に会します。
イベントは表参道からスタートし、神田、そして私の故郷でもある京都へと巡回いたします。

期間中は、ささやかではございますが冷たいパッションフルーツジュースをご用意してお待ちしております。
まだまだ曇り空のジメジメとした気候が続きますが、南国の風を感じる爽やかな一杯とともに、職人たちが紡ぎ出した手仕事の温もりを、ぜひ直接肌で触れて感じてみてください。

皆様のご来店を、心よりお待ちしております。

■開催スケジュール
Y. & SONS 表参道:7月3日(金)~ 7月12日(日)
Y. & SONS 神田:7月15日(水)~ 7月26日(日)
Y. & SONS 京都:7月29日(水)~ 8月9日(日)

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